3.変性側弯症Degenerative scoliosis

3.変性側弯症

変性側弯とは

 成人期の側弯症(背骨が横に曲がる病気)には、大きく分けて2つあります。1つは小児期の側弯症(背骨の横曲がり)で、装具によって治療していたが手術までは必要なかった方、経過観察となっていた方、もしくは気づかれなかった方が加齢に伴う老化現象により、背骨の曲がりが進行してくる場合と、新たに中高齢期になって加齢現象により背骨の曲がりが出てくる場合があります。

変性側弯症の症状

 これらは、どちらも背骨の曲がりが大きくなると腰痛が出現し、長く立っていたり、歩いたりすることが困難になってきます。また背骨は神経の入れ物でもあるために、背骨が曲がることで神経が挟まり込まれたりし、おしりや足に神経痛を生じる場合もあります。また、背骨の曲がりにより、内臓を圧迫し、逆流性食道炎や便秘、重症の場合は食べ物を飲み込むことが困難になります。またせなかの背骨の曲がりがひどくなると、肺が膨らむのが困難になり、息苦しく感じる場合もあります。これらの症状は、経年的に徐々に進行し、日常生活の制限が生じてきます。
 小児期の側弯症の加齢による進行例では、症状は比較的若年期(30−50歳頃)から出現し、中高齢期になって新たに背骨の曲がりが出現する例では50-70歳頃から腰痛や神経痛、歩行障害、その他の症状が出てきます。

変性側弯症の治療

 症状が比較的軽度のうちには、筋力トレーニングや体幹・下肢のストレッチ、コルセット、痛み止め、低周波療法などの治療で症状が軽減することもあります。しかし、加齢とともに背骨の曲がりが大きくなり、症状が強くなってくると、これらの治療では対応できなくなってきます。背骨の曲がりが強く、腰痛や神経痛などのために日常生活制限が強い時は手術治療を考慮します。
 手術では、背骨と背骨をつなぐ関節を削ったり、背骨自体を削ったりした上で、背骨と背骨の間にケージと呼ばれる箱に自身の削った骨や人工骨などを入れて、ネジとロッドと呼ばれる棒を使って矯正します。そして、前から見た背骨の曲がりと横から見た際の腰曲がりを矯正します。固定する範囲は患者さんによって異なりますが、多くの患者さんで背骨の真ん中くらいのところから、骨盤のところまで固定することが多いです。手術はその大きさや患者さんの体力に応じて1回で行うことや、2回から3回に分けて行うこともあります。
 患者さんの体力、背骨の曲がり方、骨質、症状によって治療方法は異なりますので、担当の先生にご相談ください

図1.30代の女性、小児期からの側弯が加齢でさらに進行したと考えられる変性側弯症
図2.60代の女性、中高齢期に出現したと考えられる変性側弯症