6.医原性後弯Iatrogenic kyphosis

6.医原性後弯

医原性後弯(いげんせい-こうわん)とは

 脊椎手術は多くの患者さんに対して症状の改善をもたらしますが、時に症状が残ったり、術後に新たな症状が出現したりすることがあります。その中で脊椎手術後に発生する腰曲がり(後弯症)を医原性後弯といいます。医原性後弯は主に固定術を行った患者さんに起こり、不良なアライメントでの固定、手術した部位の隣接部での変性や骨折などが原因となります(図1)。現在は固定術を行う際には全脊椎のアライメントに気をつけて固定するという考え方が定着しつつありますが、以前はそのような概念がなかったため、医原性後弯が生まれやすい状況にありました。

医原性後弯の症状

 一般的な後弯症と同様に、頑固な腰痛、立位保持困難、歩行障害を呈し、時には日常生活に制限が出ます。

医原性後弯の治療法

 症状が強く、日常生活に制限が出るときには手術を考慮します。再手術では脊椎全体のアライメントを考慮して、良好なアライメントに矯正して固定することが必要になります(図2)。しかし、再手術は組織の瘢痕や癒着が強いことや、比較的固い変形であり椎体骨切り(ついたい-ほねきり)という難易度が高い手術が必要になることが多いです。そのため、手術時間も長く、出血も多くなります。感染や神経合併症の発生も初回手術に比べて高率であるため、手術前に主治医とよく相談することが大切です。

図1
図2